2018_01
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(Wed)20:50

ラブリー 霰尾垂釜

以前、佐々木釜彦さんの店を訪ねたとき、いろいろ話した後、いきなり釜彦さんが店に置いてある釜をさして、「この中から選ぶならどれにしますか?」と聞かれたことがあった。

奥さんも僕も自分がいいと思った釜をあげたあと、釜彦さん自身が選ぶなら、と選らばはったのが、霰釜だった。

釜師にとって、霰釜には特別な思いがあるようだった。

霰を打つときは、一気に打つのだそうだ。一晩、二晩の徹夜もあたりまえ。一度打てばそれでいいというものではなくて、粘土の型なので、あたらしくひとつ打てば前に打ったのがゆがんだりするので、もう一度打ち直して形を整える。さらに、そのあとで、また整える・・・と、いう作業を、延々、1000~2000粒、とか・・・。

それを、一気にする。そうしないと、調子やリズムがかわって、きれいな霰が打てないそうだ。

そんな話を聞いて、とてもじゃないけど、ぼくにはできないなあ・・・と(笑

 

そういうわけで、霰釜というのは、なかなか、ぼくにとってもちょっと特別な釜という感じで、ほしいなあ、と思いつつ、なかなか手がだしづらかった。

 

もうひとつ、手が出しづらかったのが、霰の調子、というか、勢い、というか。

釜彦さんがいうには、霰釜の霰はツンツンにとがっているのがいいそうだ。指で触れたら肌がひっかるくらい・・・(って、まるで、凶器?^^)

そして、結構、そういう元気な霰の釜が多い。

なんか・・・僕個人としては、いら~として、攻撃的で、あんまりすきじゃないなぁ。。。

そんな釜でお茶飲んでても、くつろげないし、落着けないなぁ。。。みたいな。

まあ、いら~とはしなくても、霰は、威厳があったり、威圧的であったり。

前に、清右衛門美術館でみた、霰の釜も、それは武家好みの釜だったけど、とても威圧的。それを目的に作られているのだから、当たり前といえば当たり前なんだが。

とにかく、霰釜は、威圧的で威厳に満ちいてるとまではいかなくても、けっこう、いかつかったり、とかの雰囲気のものが多い。

(大西系の霰釜はその傾向大、寒雉でもいかつかったりする)

そんななかで、ある時、京都のお茶道具屋さんで、寒雉作の小霰棗釜というのを見た。

細かい霰で、とても美しかった。

こういう霰釜ならほしいなぁ、とは思ったものの、棗釜はもう持っていたし、値段も20万もするのは、僕は買う気にはならない^^

 

そんなこんなで時が過ぎてきて、まあ、例によってネットオークションで。

霰の肌がよかった。元気な霰ではなくて、朽ちた風情。

また、尾垂れというのもいいかな、と。

尾垂釜というのは、もとは普通の釜だったのが長年使っているうちに底が悪くなって、それを外回り小さな底に入れ替えた釜(あるいは、それを模してつくった釜)。

なので、霰が朽ちている風情というのは、尾垂釜としてとても理屈に合ってもいる。

火に当たる底は朽ちてしまい、肌も朽ちていく過程にある釜を、尾垂れにしたんだ、と。

もともと百会霰釜だったのを、悪くなった底を入れ替えて、尾垂れにしたと、そんな物語を演出しているというのも、おもしろいかな、と。

また、尾垂れなら、甲と底がぴったりの釜よりも、多少、いかつさもなくなるかな、とも。 


その釜が今日届いた。


P1105169 (512x384)

 

ただ、実物を見て、なんか・・・足をすくわれた、というか。。。

思ってたより、かなり、こじんまり。

(胴径が万代屋釜くらいあるので、おなじくらいのヴォリューム感があるかも、と思っていたが)

いや、かなりのカルチャー・ショック!

こんな釜もあったのか・・・。

ネットの画像で見たのと、印象はだいぶちがう。し、朽ちていくというあの物語とも、全然違う。。。

 

P1105168 (512x384)

 

なんか・・・ラブリー^^

霰なので、いかついのが、朽ちていく感じでなんとかいかつくないかな、とおもっていたのが・・・ 

P1105182 (512x384)

 

たおやか、というか・・・。

それで気がついけど、なんやかんやいいつつ、うちの釜、けっこう、どっしりとしていたり、堂々としていたり、重厚だったり、あるいは、男性的だったり。

それにたいして、この尾垂れ、なんとも女性的、というか、京女っぽいとでもいうか・・・。

たおやか。

いかにも、威厳があったり、重厚だったり、堂々としていたり、という釜はあまり好みじゃないので避けてきていたと自分では思っていけど、この尾垂れとくらべると・・・。

 

しかも、かろやか。

秋、冬くらいに使うつもりが、真夏でも使えそうなくらい。

 

P1105171 (512x384)

 

まあ、西村道也なので京釜といえば京釜なわけだけど、だから、なんか、京女というか・・・。

 

P1105174 (512x384)

 

霰一粒一粒が、なんとなく朽ちていく過程のようだし、霰の間の肌も、ほろほろと朽ちて行っているような、そんな表現。

別の見方をすれば、もともと普通サイズの霰粒だったのが、朽ちて小さくなってきている、とも。

あるいは、もともとは平らだった釜肌が、朽ちて、霰のように凹凸ができた、とそんな風にも見立てができる肌。

小霰のものでも、ここまで繊細で行き届いた表現なのは、さすが、道也さんってわけ、かな。

また、霰の粒は、口の周りは小さく、尾垂れの先の方へ行くほど大きくなっている。

 

P1105178 (512x384)

 

蓋も特徴的、というか。

一見何でもない、ありふれた蓋のようだけど。

薄くて軽い。が、ちゃちでもないし、やすっぽくもない。

画像でははっきりしないけど、おだやかな掬い。

霰同様、とても丁寧に作られている感じがする。

表面の加工も、あまり見たことがない、というか。

こういう色も。

つまみは、なにかな? かたばみ?

とりあえず、何か花のつぼみ?

 

P1105162 (512x384)

 

鐶も小さめ。

上が、尾垂れの鐶。

左が、佐兵衛浄元の鶴首、右が釜彦の撫肩の鐶。

 

P1105160 (512x384)

 

いつものためし炊き。

湯に錆はほとんどなし。

臭いが、けっこう。古い鉄のにおいと、炭酸カルシウムみたいな。。。

水を入れる前に釜全体を濡らす。そして、火にかけると、尾垂れの先から水がぽとぽと垂れて、そのさまが、また、なんとも、風情があるなぁ、と^^

 

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